ひぽぽたます

Life is one time only

トレンド

教育上本当にいいの? 「池の水ぜんぶ抜く」の正当化について専門家が指摘

投稿日:

テレビ東京の人気番組「緊急SOS 池の水ぜんぶ抜く大作戦」では、外来種を悪いものと決めつけ、生き物をバケツに放り込むシーンが頻繁に出てきます。

最終的には生き物を殺す結果になることは気にも留めず、嬉しそうに捕獲する子供たち…。
見方によっては、地獄図のように見えるこの光景に、専門家が首をかしげています。

「緊急SOS池の水ぜんぶ抜く大作戦」ってどんな番組なの?

「緊急SOS池の水ぜんぶ抜く大作戦」は、自治体や住民からの応募に応え、手の加えられていない池をかい掘りし、迷惑な外来生物の駆除やごみの撤去を行うドキュメントバラエティです。
司会者はお笑い芸人で、ゲストとして毎回さまざまなタレントを迎えています。
日比谷公園の時は、小池百合子都知事も登場しました。

TV情報誌記者が言うには、「緊急SOS池の水ぜんぶ抜く大作戦」が2017年に放送スタートした時は特番でしたが、シリーズ化されると10%以上の高視聴率をマーク。

意外な高視聴率に、春からは毎月1回のレギュラー番組にまで上りつめたのです。
視聴者にとっても、池の中からどんな生き物が出てくるのか、期待でワクワクした気持ちで番組を観ることができ、クリエイチャー好きにとってはたまらない番組とも言えます。

サイエンス番組のようで、一見子供の教育にも良さそうな番組に見えるものの、一方で、番組の問題点を指摘する声もあります。

2018年2月、ヤゴを捕食する外来魚を駆除する様子を収録した時、参加者1000人が池の中を踏み荒らしたことにより、外来種だけでなく、在来種を含む多くの小魚が死んでしまったのです。

原因は、現場で専門家が不足していたことです。
そのため、番組の杜撰な進行を批判する声が相次ぎました。

この時はテレビ東京の社長が定例会見で弁明する事態にまで発展してしまいましたが、時間が経つと何事もなかったかのように、また番組独自の進行になっていきます…。

7月22日に放送された回では、なんと千葉県にあるお寺の池を舞台として、50人もの小学生が参加し、駆除を行ったのです。
「この池に巣くう影の支配者が出た!」
「ヤング隊、総動員でブルーギル(外来魚)の駆除に掛かる」

といった大袈裟なナレーションをサインとして、子供たちがブルーギルを捕獲します。

殺生を禁ずる仏教寺での大量駆除は、ブラックジョークとも言えるのではないでしょうか。
純粋な子供たちにとって、生物の尊い命を奪っているという実感はなく、まるでお祭りかのようにイベント化していたのです。

おしまいには、水も張っていないバケツに山のように積まれた魚まで映し出されました。

岸由二名誉教授:「外来種だからって全て駆除するのは極端すぎる」

生態学の専門家・慶應大学の岸由二名誉教授はこのように問題を指摘しています。

「外来種だからといって全て駆除しなければという考えは極端すぎる。
いかがなものだろうか。」

岸由二名誉教授;「番組内では、それぞれの生態系を最終的にどうしたいのかゴールを決めていません。
外来種の駆除だけが目先の目標として先行してしまっている。
私も外来植物の駆除をしていますが、場所によっては在来種を除去することもあります。目標次第でケースバイケースなので、外来種だからといって必ず駆除するという考えは
あまりにも極端です。」

在来種か外来種かのみを基準とするのは、生態学的にも疑問視されます。

特に気がかりなことについても語ってくれました。

岸由二名誉教授;「もしもその動物が本当に悪だとしても、子供の頃に乱暴に動物を抹殺させる体験をさせるのは、教育上いいこととは思えません。

自然を守るためと正当化できたとしても、動物の駆除は大人が行うべきです。
市民を参加させてイベントのようにお祭り騒ぎにするのもおかしいし、ましてテレビでおもしろ楽しく取り上げる題材ではないです。」

見方によれば、外来種の殺生を正当化して楽しく仕上げた番組の方が「悪」です。
教育上良いと思いきや、実は子供たちにとって悪影響になる危険性も考えられるのです。

-トレンド